ゆめみがちな記録帳

舞台の記録とか推しの話とか

観劇記録:シス・カンパニー『ザ・ウェルキン』(2022年7月)

タイトル:シス・カンパニー『ザ・ウエルキン』

 

観劇日:2022年7月17日 

 

劇場:Bunkamuraシアターコクーン

 

公式サイト

www.siscompany.com

 

公式ダイジェスト

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⚠ネタバレ含む⚠

 

今回土屋佑壱推しの友人に誘われて観劇してきた。土屋佑壱出演作は*pnish* vol.16『*pnish*(パニッシュ)』*1しか生で見たことなかったのだが、あれはアフト目当てなところもあったので、私の中ではノーカンとしていたので実質初観劇だといってワクワクしながら行った。もうそのワクワクは最後のあるシーンで一瞬で絶望へと変わったけれど。(なんでここで土屋佑壱話をしたのかは後程。)

 

ちょっと私が劇場でパンフレットを買い逃したがゆえに全員の役名を把握しきれていないので、大変申し訳ないが役者名で一部書き進めていく(敬称略)。あくまでも役の話をしているので、そこだけ理解したうえでここから先読んでほしい。

1759年、英国の東部サフォークの田舎町。人々が75年に一度天空に舞い戻ってくるという彗星を待ちわびる中、一人の少女サリー(大原櫻子)が殺人罪で絞首刑を宣告される。

しかし、彼女は妊娠を主張。妊娠している罪人は死刑だけは免れることができるのだ。その真偽を判定するため、妊娠経験のある12人の女性たちが陪審員として集められた。これまで21人の出産を経験した者、流産ばかりで子供がいない者、早く結論を出して家事に戻りたい者、生死を決める審議への参加に戸惑う者など、その顔ぶれはさまざま。その中に、なんとかサリーに公正な扱いを受けさせようと心を砕く助産婦エリザベス(吉田羊)の姿があった。
サリーは本当に妊娠しているのか? それとも死刑から逃れようと嘘をついているのか?
なぜエリザベスは、殺人犯サリーを助けようとしているのか…。法廷の外では、血に飢えた暴徒が処刑を求める雄叫びを上げ、そして…。

正直このあらすじで希望があるとは思っていなかったけれど、終わった後予想以上に気持ち悪くなった*2

サリーに対してエリザベスがあんなに必死なのは絶対裏があると思っていたので、実は二人の血がつながっているというのはまだそんなに驚かなかった。ただ他のキャラとサリーに深いつながりがあるとは思わなかったし、エリザベスと他のキャラの中に『助産婦とお世話になった(なっている)妊婦たち』という関係以外の何かがあるとは思わなかった。

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ある時から離さなくなった女性を演じた西尾まりの独白のシーンが話の流れを変えていったと個人的に思っているので、とても印象に残っているのだけれど、八嶋智人が稽古場突撃した時の「普段おしゃべりな西尾まりがしゃべらない」のくだりがまさか伏線になるとは思わなかった。観劇後に動画見直しながらこの記事まとめているときに「まじかよ」って言ったよ*3西尾まりが最後「私はあなたと友人に……」という台詞を聞いて頭の中でもうすごいいろいろな感情がうわあ!!となった。最初はただしゃべらない女だと思っていたので、なんかもうだまされたなという気持ちだった。もちろんいい意味で。

主演二人もすごかったな。テレビでしか見たことなかったからテレビの印象がもちろんあるのだけれど、こんなになんか心鷲掴みにされて握り潰されることあるのかと思った。サリー演じる大原櫻子は狂気じみた死刑囚という感じがして恐ろしかった。吉田羊演じるエリザベスはいい助産婦なのかと思いきや、話が進めば進むほどいろいろと出てきて声荒げるとことか怖かった。そんな二人なのに最後はすごく美しかった。ハッピーエンドとかの良いシーンじゃない、むしろバッドエンドの苦しいシーン。でも本当に美しかった。

 

物語のネタバレを少しする。結果として彼女は妊娠していたので刑は免れるわけだけれど、そのあとにある事件が起きて結果として死ぬ。じゃあなんで死んでしまうのかというのに大きくかかわってくるのが土屋佑壱で。

土屋佑壱演じるクームスは今回女性たちが議論しているのをずっと監視している立場にいて、監視中は言葉を発することが出来ない。つまり舞台上にいるのに発することがほぼない。一番発していたのは、エリザベスに陪審員になってほしいと言いに来るところだと思う。サリーが妊娠しているとわかり移動させようというときに、今回サリーに殺された少女の母親がクームスにある頼みごとをする。実は今回殺された少女はこの町の領主の娘で、クームスは領主の下で働いていた。さすがに無理だと最初は断るクームスだが、母親の頼みを断り切れずにその頼みごとをやる*4。その頼みごとをやるときのシーンを見たとき、思わず「うわあ」と声が出そうになった。「そこまでやるか?」と思う反面「愛しの我が子を失っているもんな……母親は」という気持ちもあった。

土屋佑壱、今回出ずっぱりのくせにほぼしゃべらないのに存在感がすごかったし、サリーが妊娠しているか医師に確認されるシーンで女性たちに「見るな」と言われて背を向けるのだけれど、その時に下手の一点を見つめる土屋佑壱の眼力が怖かった。そして最後のあれでしょ?少し話がそれるけれど、実は私土屋佑壱と永山たかしのオンラインイベントによく参加していて。私の中の土屋佑壱はその印象がすごい強いので、なんかもうウエルキン観劇した時背後から思いっきり鈍器で殴られた気持ちになった。もうぐわんぐわんした。すごかった。最初言った通りわくわくが一瞬で絶望に変えられたし、とどめを土屋佑壱に決められたのだけれど、本当に見てよかったし土屋佑壱良かった。友人に言うと「いいだろ?」と沼を広げられるので言っていないけれど。

 

ある事件が起きた前後に関わってくる役者が二人いて、その二人も本当に良かった。

まず一人目が明星真由美。彼女の演じるヘレンは不妊症で、この『妊娠しているかどうか』という議論の中でもそれが大きく関わってくる。最初はエリザベス同様サリーを助けようとするんだけどそれにも人間としての暗い気持ちがあったし、最後判決を下すときに彼女が泣きながら話すシーンでは泣いたし、そのあとほぼ全員で歌っているの見てるとき胸が苦しかった。そしてそんな明星真由美、実は兼役でクームスに頼みごとをするあの母親を演じていて。それを帰り道パンフレットと照らし合わせながら友人が教えてくれた時混乱したよね。『子供を授かることが出来ない苦しみを知る女性』と『子供を失うくるしみを知る女性』を同一人物に演じさせるか?でも違うけれどおなじ子供に関する苦しみだからこそ彼女に演じさせたのかなとか思ったり。ちなみに今回友人と話していてびっくりしたのが、彼女の経歴に気志團マネージャーってあったこと。特殊すぎて、別の意味で混乱した。

二人目が峯村リエ。彼女の演じるエマはサリーは妊娠していないと最初から断言していて、エリザベスにもいろいろ言うまあ一見するとよくいる感じの強気な女性。でも最後ある事件が起きた後から終盤にかけての彼女が、(個人的には)すごくいい女性だなという感じで。終盤のあの状況であそこまで冷静にエリザベスに判断を促すことが出来るのはすごいなって思った。ちなみに峯村リエ自体はとてもかわいらしい方で、TIKTOKとか見てて元気もらっていた。

もちろん他に出演している女性全員素敵だった。書きながら思ったけれど全員TIKTOKとかYouTubeの時は楽しそうなかわいらしい女性なのに、劇場で見ると女のすべてを表したような何とも言い難い世界観を演じきっているわけで、ほんとうにすごいなって。でも全員書いたらきりがなくなるので、今回は特に印象に残っていた役者陣の名前を挙げてみた。

 

個人的に考察とか考えすぎて気持ち悪くなるような舞台が好きなのと、そういう舞台は役者陣も「役作り大変でした」「苦しかったです」ということが多いので、そこで改めてすごさを実感できる気がしていて。もちろん明るい舞台とかも大好きだしよく見に行くけれど、「印象に残っている舞台ある?」と聞かれるとこういう傾向の作品が私の場合は多い。

だから主演二人はもちろん全員すごいと思ったし、怒られるんじゃないかってくらい『気持ち悪かった』というワードを使ってしまっているけれど、実際すごくそう感じたし絶望の与えられ方がすごかったのに最後の二人は美しかったし。ここまですごい言葉を並べてしまったのでここからどういい感想に持っていけるのかわからないので最後はこんなありきたりな言葉しか使えないけれど、本当に最高だった。一部公演は中止になってしまったけれど最終的には無事終えることが出来てよかった。今になってもう一度見たい禁断症状に駆られているので、なんとかしてこの狂気を味わえないかと思う。締め方が分からないので、友人への感謝の言葉を書いて『ザ・ウェルキン』の観劇記録とする。

友人へ。誘ってくれて本当にありがとう。あと混乱しすぎて帰り道「許さねえ」ばかり言っていてごめん。

 

 

 

 

 

 

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*1:土屋所属ユニット20周年記念作品

*2:いい意味で。作品は良かったし、観に行ってよかったと思えた。

*3:たまたまだと思うけれども

*4:なんでする、ではなくやるなのかは察してくれ