ゆめみがちな記録帳

舞台の記録とか推しの話とか

日記:なかなか話せなかったあの話をしたい。(マグダラなマリア)

観劇オタクをしてもうそこそこの年数になってきたが、見た作品の中には色々な事情で、表で好きだと言いにくくなるものが出てくる時がある。我々はそういう話をする時『演劇老人会』と呼んでいるのだが、最近よく老人会の中で10年近く前の作品の話になる。その中で特に盛り上がるのが『マグダラなマリア』だ。

 

マグダラなマリア。初演は2008年で最終は2013年のあの作品。130歳を超えてもなお輝く美貌と美声を有した歌手であり女優であり高級娼婦であるマリア・マグダレーナを主人公に繰り広げられる物語。私は友人から円盤を借りてみたのが初見だった。それまで触れたことのない世界観で、娼婦達の話なので下ネタや性的表現が多数ある。当時はまだここまでいろいろな作品に触れていなかったので、あまりの衝撃で初見時は一度再生する手を止めた。でもそこでしかしれない感覚というものはあるので、何度見るうちに癖になってどんどん深みにはまっていった。今思うとコバーケンが褌姿で客席走り回っているの、普通に怖くないか?自分の席のひじ掛けに褌姿の男が立っているんでしょ?もし私が何も知らずにチケット招待をされていきなりそんな事されたら、いろいろな意味での恐怖でしばらく忘れられないと思う。よくできたよな、時代を感じる。

 

作品のキャラとかの話をする。当時の私はグレイスが大好きで、グレイス演じる津田健次郎の低くて渋い声とあの妖艶な姿の差と、あの下ネタを連呼するような性格にどんどん惹かれていった。ちなみに「好きだなあ」と思うのは『二度ぐらいに死ぬ!』に出てくるアンジェラ*1と、『恋のカラ騒ぎ』のお葉たんとアナスタシア様。いや、エスメラルダも好きだし渚さんも好きだし、アンナさんも好き。マルタは二次関数覚えていて可愛い。結局みんな好きなのだ。そういえば今思うとキャスティングすごいよな。「あなたよくOKしましたね!?」みたいな役者がちょいちょいいる。まあだからこそ深みと厚みのある舞台にもなっていると思うけれど。

あと楽曲も好き。『アナスタシア』『怒りと恥辱』のように歌唱力にやられる曲もあれば『ティータイム』『イッツエンターテイメント』のように名言を残しているのもある。かと思えば『自転車に乗って』みたいな曲もある。全部耳に残る。歌詞が結構口ずさんでしまう内容で「芸術なんて、もんじゃない」と言われたら「役者なんて、窓辺でほほ笑む町の娼婦と変わらない」と即答できる。あそこを通った人間はみんなわかるだろう。

話せば止まらない。あの作品は人間をここまで饒舌にさせる力があるし、狂わされる力がある。その時はまだ現地で見たことはなかったけれど、私はどっぷりと世界にハマっていた。

 

そんな風に狂わされてから少し経った2013年秋。マグダラの新作をやると聞き、友人とともにチケットをとった。やっと生で見れる、あの世界を生で浴びて狂うことができる。本当に楽しみで仕方がなく、日々のつらいこともマグダラ効果で帳消しになっていた。でもマグダラがマグダラとしてAiiA Theater Tokyoで上演されることはなかった。すごくショックだった。何のために生きるのかわからない状態になっていた。結果としてグレイスプロデュースとして『亜雌異人愚*2なグレイス』という代替公演が上演されたので私も観劇に行ったが、あれはマグダラではなかった。もちろん直前でグレイスプロデュースでやってくれたのは本当にありがたい。しかも私の大好きなグレイス主演だし。でも違う、私が見たかったのはマリア・マグダレーナの横で「ぐふっ」と笑いながら強烈なことを言うグレイスだったんだ。

その後、なんとなくだけれどマグダラの話をするのは許されない空気感が出始めた*3。あの事件の後に「マグダラが好きで」と言ったら、「あの作品好きだなんてどうかしている」と言われたこともある。正直彼がやったことは許されることではないので、「新作を上演するなんて!!」と反対意見が多い気持ちもわかる。その作品が嫌いになってしまう人が一定数いるのも理解ができる。でも他の好きな人間が、過去の話すらできない空気になったのは悲しかった。好きで悪いか?作品と他の出演者には罪はないんだよ。その作品を愛している私たちに罪はないんだよ。でもその『好き』を否定されることがつらかった私や周囲は、いつしかその名をSNS等では出すことがなくなった。

 

数年経って令和4年。最近『マグダラなマリア』というワードがTLに流れることが増えてきた。TLを見た限り、別作品で出演者を推し始めたオタク達*4が「え、〇〇さん女性役なの!?気になる!!」となったりしたところからなのだろう。それをみたTLに潜んでいた(私を含めた)マグダラ好きのオタク達が、それに感化されたように話をしはじめていてとても嬉しかった。紅茶にミルクを入れるのは渋くなる二杯目からだし、水がなければお茶を飲めばいい。ゴディバを見たときに「本物のゴディバよ!!」って喜べる仲間がTLに何人もいるなんて、なんて素晴らしいのだろう*5

やっぱり好きなものは好きだと言いたいし、話せるのは楽しい。欲を言えば生で見たいけれどそれはもうかなわないだろう。似たような作品を誰か別の人間がやってくれと思うがそうすると、それはマグダラではなくなるわけで。こうした気持ちを友人に伝えていたら耐えられなくなったので、こうしてまとまりのない文章を生成してしまった。けれど書けてよかったと思う。

そういえばここ1~2年で知り合った友人達が結構マグダラ好きが多いのが最近発覚したので、いつかみんなでマグダラ耐久レースをしたいという話をしている。本当にできたら楽しいだろうな。紅茶とワインを飲みながら、甘いお菓子を食べて。あとは海老グラタンも欲しい。ああ楽しい。これなら私が2013年にAiiAに置いてきた気持ちは無事成仏できそうだ。

 

世の中ごちゃまんと人間がいるので、多少の意見の相違があるのはわかっている。でもあくまでもこの『好き』は自分の気持ちなので全否定はされたくないし、これからもずっと好きだと言い続けていきたいなと思う。というところでそろそろまとまりがなくなってきたので、この辺で終わろうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

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*1:この場合永山たかしのアンジェラ

*2:アメイジング

*3:そんなことないとかいうやつもいるけれど、少なくとも私や友人の周りはそうだった

*4:一連を詳しく知らない

*5:ネタがわからない人はマグダラを見て